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オフィス内フリーアドレスならVDIより有利?  「KVM over IP」とは (1)VDI・画面転送方式のシンクライアントはフリーアドレス化に有効だが課題も残る


<目次>

目次[非表示]

  1. 1.KVM over IPを使ったフリーアドレス計画
    1. 1.1.メリットとデメリットを短期と長期の両方で考える
      1. 1.1.1.初期費用と運用コストも含めて検討したい
  2. 2.同じく画面転送技術を応用したKVM over IP(IPKVM)
    1. 2.1.マトリックスKVMスイッチを使ったフリーアドレス化

KVM over IPを使ったフリーアドレス計画

メリットとデメリットを短期と長期の両方で考える


 前回の記事では、オフィスのフリーアドレスを実現する手段の一つとして、仮想デスクトップ・画面転送方式のシンクライアントを紹介しました。この方式を使えば、ユーザーはどの席からでも自身の固有デスクトップ環境を利用でき、デスクトップPCのように特定の座席に縛られることがなくなり、これによってフリーアドレス化が可能になります。


初期費用と運用コストも含めて検討したい

 この方式では、既存のディスプレイやキーボード、マウス、ネットワークや電源配線なども流用しやすいことから、シンクライアント側の追加投資が抑えられる点もメリットです。しかし、仮想デスクトップを収容するサーバについては初期投資や数年おきに生じる更新費用が高額になりがちで、大きな負担となります。また運用面でも、これまでのPC運用とは大きく変わってしまうことが課題となりがちです。つまり仮想デスクトップ・画面転送方式の課題は、主に仮想デスクトップやそのサーバの部分に集中していると言えるでしょう。


同じく画面転送技術を応用したKVM over IP(IPKVM)

 そこで今回は、サーバに集約した仮想デスクトップではなく、別の仕組みを使う方法を紹介します。それが、「KVM over IP」あるいは「IPKVM」と呼ばれる方法です。

この方法、実は古くからある手法に新しいテクノロジーを取り入れた、古くて新しい技術です。KVM over IPやIP-KVMという名称に含まれる「KVM」の部分は、Keyboard・Video・Mouseの略で、画面出力やユーザー操作のインタフェースを指します。これらの信号をサーバやPCから離れた場所に伝送し、離れた場所から操作する「KVMエクステンダ」と呼ばれる仕組みがあります。さらには、複数のサーバやPC(以下、ホスト側)をユーザーが切り替えて操作できる「KVMスイッチ」と呼ばれるものがあり、しばしばサーバ室などで使われてきました。ただし、こうした既存のKVM装置は、ホスト側とユーザーが操作するクライアント側とを、その装置専用の配線で接続していました。KVMスイッチも、多くは選択できるホストは数台程度に限られており、そうした制約ゆえに役立つ環境も限定的だったのです。


マトリックスKVMスイッチを使ったフリーアドレス化

 しかし近年、このユーザーインタフェースの信号伝送に新しいテクノロジーを取り入れ、IPネットワーク、つまりLANやインターネットと共通の技術で構成されたネットワーク経由で伝送できる製品が登場してきました。これがKVM over IPやIPKVMと呼ばれるもので、言うなれば古くからある手法が新時代の技術を取り入れて生まれ変わったような存在です。新時代の技術を取り入れたIP-KVMでは、IPネットワークならではの柔軟性を取り入れることで、既存のKVMとは全く違う新たな使い方も可能となりました。中には、Black BoxのKVMソリューション「Emerald」シリーズのように、ホスト側・クライアント側とも多数を接続し、多対多で切り替えることが可能な「マトリクスKVMスイッチ」と呼ばれるシステムを構成できるものもあります。これが、前回からのテーマであるフリーアドレス化に使えるのです。

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